中学受験は6年生からでも間に合う?短期間で逆転する勉強法を聞いてみた

連載:難関大合格者インタビュー #2
トウコベで学習プランナーを務める難関大合格者を取材し、合格までの学習法や思考法を訊く企画です。
今回は、開成中学校を経て東京大学に合格した学習プランナーに、小学生時代の読書習慣がどのように国語力向上と難関校合格に繋がったのかを詳しく伺いました。
小学6年生の6月から受験勉強を開始し、わずか8ヶ月で開成中学に合格を果たしたIさん。当初はE判定からのスタートという絶望的な状況から、どのようにして逆転合格を掴んだのか。その秘訣を詳しく聞きました。
目次
受験を決めた理由とスタート時の状況
実は、当初は受験するつもりなんて全くありませんでした。小6の6月頃、地元の公立中学見学に行った際、僕がやりたかったテニス部がないことがわかったんです。もともと勉強自体は嫌いではなかったこともあり、親と相談して受験してみようという話になりました。
最初はダメ元なところもありましたし、「せっかく受験するなら」ということで、目標は高く設定しようと通える範囲で最も偏差値の高かった開成中学を志望校に決めました。
そうですね。周りの友達は小3や小4から塾に通っていたので、正直かなり焦りました。大手の集団塾に入塾して最初に受けた合不合判定テストでは、開成の合格率は当然20%未満のE判定。「本当に間に合うのか」と不安になりましたが、それでも諦めずにやってみようと決めました。
成績については、まず国語は読書が好きだったこともあって、そこそこの点数は取れていました。でも中学受験の算数は本当に一からのスタート。基本的な計算はできても、中学受験特有の問題には全く歯が立たない状態でした。理科や社会も、学校で習う範囲を超えた内容ばかりで、最初は何から手をつけていいかわからない状況でした。
普通にやっていたら当然間に合わない状況だったので、とにかく効率よく進めるため、勉強方法の工夫は徹底的に行っていました。主にとった戦略は3つです。
- 綿密な計画
- 勉強内容の取捨選択
- スキマ時間の活用
逆転のための戦略①「綿密な計画」
僕は大手の集団塾に入っていたのですが、たまたま生徒数が少なかったこともあり、塾の先生が一緒に計画を見てくれていたんですよね。先生と一対一で、1週間単位で具体的な勉強計画を立てました。その週の何曜日に何をやるか、テキストの何ページから何ページまでやるかを詳細に決めていたんです。
はい。ダラダラ勉強しないよう、時間割も作っていました。「午前9時から11時まで算数の速さと比の問題集」「午後2時から3時まで理科の植物範囲の暗記」といった具合に、時間まで含めて1日のスケジュールを細かく決めていました。
また、休憩時間も定期的にしっかりとれるように予め決めていました。そこも決めておかないと、勉強に戻ってくるのが大変かなと思います。
もちろんありました。でも、計画があることで「今日は何をやればいいのか」で迷う時間がなくなったのが大きかったです。計画が遅れたときも、どこで調整すればいいか明確だったので、パニックにならずに軌道修正できました。限られた時間を最大限活用するには、この「綿密な計画」が不可欠だったと思います。
逆転のための戦略②「勉強内容の取捨選択」
これは一番重要だったかもしれません。国語が得意だったので、そちらをやりたい気持ちが強かったのですが、それを我慢し、まずはとにかく苦手な算数に全振りしました。国語の授業を欠席して、その時間に一人で算数の問題を解くこともしばしばあったくらいですね。
正直、怖かったです。でも普通にやっても間に合わないことは理解していましたし、限られた時間で最大の効果を得るには、苦手分野の底上げが最優先だと判断しました。たしかに、塾のカリキュラムに従って国語をやっていた時は、やはり安心感を感じました。
しかし、それは僕にとっては合格から遠ざかる行為だと割り切り、できるだけ自分のやるべきことにこだわりました。
はい。そもそも今まで塾で習えていない範囲も多かったので、追い付くための勉強はしていました。苦手分野についても、自分で一から学びなおしたり、重点的に類題を解いたりしました。
また、塾で教わった解法だけでなく、インターネットや本で自ら調べたりもしていましたね。面白い解法や特殊なアプローチを知ることは面白くある意味息抜きにもなりましたし、特に算数は解法のバリエーションが豊富なので、複数のアプローチを知っていると本番で役に立ちました。
逆転のための戦略③「スキマ時間の活用」
本当に文字通り、あらゆるスキマ時間を活用しました。お風呂には日本地図を貼って湯船に浸かりながら県名や県庁所在地を覚えたり、トイレには歴史の年表を貼って覚えたりしていました。
はい。休み時間には図書室で学習マンガを読んだり、理科や社会の小さな暗記本を持ち歩いて読んでいました。友達と遊ぶ時間も大切でしたが、「5分でもあれば何かできる」という意識で過ごしていました。
記録上は学校のない日で8時間程度でしたが、スキマ時間を含めるとそれ以上だったと思います。でも、スキマ時間の勉強は「ながら勉強」なので、それほど苦痛に感じませんでした。むしろ、普段の生活の中に勉強が溶け込んでいる感覚で、自然に知識が身についていく感じでした。
転機となった12月の模試と最後の追い込み
12月の模試で初めてE判定を脱して、D判定を取ることができました。この時は本当に嬉しかったです。それまで何ヶ月もE判定が続いていたので、「やっと光が見えた」という気持ちでした。
塾の学校別特訓講座を最大限活用しました。開成に特化した問題演習や傾向分析が役立ちました。同時に、過去問も徹底的にやり込みました。開成の問題には、東京のことを詳しく問われる「東京問題」があったりと特殊な対策が必要な部分もあったので、とにかくそれにチューニングしていった感じですね。
正直、試験直後の感覚は「本当に何とも言えない!」という感じでした。算数はやはり難しかったですし、また、社会については後から気づいたケアレスミスが2点ほどあったので心配でしたが、それでも合格の可能性を5割程度には信じていた自分は、めちゃめちゃ前向きでしたね。
でも、結果的には本当にギリギリで合格できました。今思えば、最後まで諦めず前向きさを貫けたからこその合格だったのかもしれません。
受験を振り返って〜これから挑戦する人へのメッセージ
「塾を盲信せず、自分のやるべきことをやった」ことだと思います。実際私自身塾にはお世話になりましたし、良い点もたくさんありますが、通っているとどうしてもその塾のスケジュールや小テストに振り回されがちになってしまうと思います。
でも、あくまで目標は個人の中学受験合格です。その点については、集団塾にはどうしても限界があるので、自分の現状と目標、そして残り時間を考えて、自分なりの戦略を立てることが大切だと思います。
まず、メンタルと身体を壊さないことが前提です。ですがその上で、目の前の宿題をこなすだけに逃げず、恐れずに受験を見据えて、やるべきことをすべてやることが大事だと思います。6月からのスタートは確かにすごく遅いですが、不可能ではありませんでした。
僕自身、最初は「本当に間に合うのか」と不安でしたが、限られた時間だからこそ、効率を最大化する工夫ができたと思います。周りと同じことをやっていては追いつけませんが、自分なりの戦略があれば逆転は可能です。
受験勉強は確かに大変ですが、この経験を通じて計画性や継続力、そして諦めない心も身につけることができました。結果だけでなく、その過程で得られるものも大きいと思います。
保護者の方々には、お子さんの頑張りを信じて、できる限り最後まで支えてあげてほしいです!僕も両親の支えがあったからこそ、最後まで頑張り抜くことができました。時には厳しい現実をつきつけられることもあるかもしれませんが、諦めずに挑戦することの大切さを、この体験を通じて学ぶことができたと思います。