
小6秋に「やる気ゼロ」になる3つの理由
まず、なぜこの時期に子供はやる気を失うのか。原因を理解することで、適切な対応の方向性が見えてきます。
理由1: 現実との乖離で「どうせ無理」モードに
過去問を解き始めるこの時期、多くの子が初めて「志望校との距離」を実感します。
合格最低点に30点、50点足りない。その現実に直面すると、「頑張っても無駄」という無力感に陥るのです。
理由2: 夏の反動と疲れの蓄積
夏期講習や模試ラッシュを乗り越えた秋は、肉体的・精神的な疲労がたまりやすい時期です。
この「燃え尽き」や「中だるみ」の状態に入ると、集中力や粘り強さの低下が目に見えて現れます。
理由3: 過密スケジュールによる「やらされ感」
小学6年の秋になると、志望校対策や模試、過去問演習が本格化し、スケジュールが過密化します。週に1〜2日程度だった通塾日が平日・週末ともに埋まり、実質「休みがない」状態に。
このような環境では、“やらされているだけ”という感覚が強まり、内発的な動機が失われてしまいます。
心理学から見るやる気が起こるメカニズム
子供がやる気を起こすメカニズムを解き明かすのが、心理学の自己決定理論(Self-Determination Theory)です。
この理論によると、人間の学習意欲は、3つの基本的心理的欲求が満たされることで高まります。
- 自律性(Autonomy):「自分で選び、行動を決定したい」という欲求。
- 有能感(Competence):「物事をうまくこなし、成果を出したい」という欲求。
- 関係性(Relatedness):「他者とつながり、認められたい」という欲求。
この3要素が満たされると、「自分でやりたい」という前向きな行動が自然に生まれます。
したがって、子どもに“やらせる”のではなく、“自分で決めて進められる”環境をつくることがカギになります。
今日から始める4つの対策
対策1:「選べる」時間・形式をつくる
塾や家庭学習の中に、「自分で決める時間」を意図的に組み込みましょう。
1日15〜30分でも「何を・どう進めるか」を自分で決めることが、やる気の第一歩です。
例:
「今日は理科の苦手単元を自分で選ぶ」「過去問か暗記、どちらを先にやるか選ぶ」
対策2:「なぜ勉強するのか」を一緒に言語化する
「合格のため」だけでは、目的が遠すぎて実感が湧きません。
「〇〇中でこういう活動をしたい」「将来××になりたい」といった、“本人の内的動機”を一緒に言語化することが重要です。
対策3:スモールステップで進め、できたことを可視化する
秋は過去問・応用演習中心で「できない問題」に直面しやすく、自信を失いやすい時期です。
そのため、1日の学習に「必ず達成できる課題」と「挑戦的な課題」をバランスよく組み込みましょう。
「できた」を可視化すると、学習意欲の再点火につながります。
例:
「今日は四則演算の基礎問題を先に10問やってから、入試問題に挑戦」
対策4:親の役割を「監督」から「伴走者」へ
受験本番が近づくと、焦りから親の声かけがつい厳しくなってしまいがちです。
しかし、子どものやる気を引き出すうえで最も重要なのは、「安心して努力できる親子関係」を保つこと。
叱るより、共に考え、共に進む姿勢を示すことが信頼を育てます。
例:
- 「やったの?」「まだ?」ではなく、「どこが一番大変だった?」「今日はどこがうまくいった?」など、共感ベースの会話を増やす
- 「一緒にタイマーをつけて10分だけ集中しよう」など、短時間の共同行動で安心感と集中力を高める
まとめ:残り3ヶ月、親子でできること
小6の秋は、子どもが「やる気を失いやすい」時期です。
しかし、それは性格の問題ではなく、心理的・環境的要因が大きく関係しています。
現実とのギャップや過密スケジュールでモチベーションが下がっている場合も、心理学的アプローチを取り入れることで前向きな姿勢を取り戻せます。
「選択の余地」を残し、自分の成長を実感できる環境をつくり、親が伴走者として支える——。
こうした小さな工夫の積み重ねこそが、秋のやる気低下を乗り越える一番の近道です。